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マダガスカル通信 vol.2

政策課 : 2023/11/20

任地について

 あらためて私の任地、ソアヴィナンジーナについてご紹介します。首都から西へ約140km、標高約1,500mに位置する高原の街です。
 人口は約4万人、面積は約200km²で、雨季と乾季があり一年を通じた気温は8℃から27℃、特に朝晩と日中の寒暖差が激しい気候です。
 郡内における中心の街であり、電気・水道設備は整備されているものの、非常に不安定で、停電と断水が数日間続くことも珍しくありません。


フランスを感じる町並み

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郊外には田畑が広がる

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 また、市内には大型店舗やスーパーマーケットはありませんが、毎週月曜日に路上で開催される大きな市場や各種の小売店がたくさんあり、最低限の生活必需品は購入することができます。

 市内に住む多くの住民は農業や畜産業に従事しており、米、豆類、しょうが、葉物などさまざまな品種の野菜や、パイナップルやマンゴー、バナナ、パパイヤ等の豊富な果物が栽培されています。気さくで親しみやすい人が多く、毎日のんびりとした時間が流れる素敵な街です。

 しかしその一方で、国民の約80%が1日1.9ドル(約300円)以下で暮らす質困問題、清潔な水や適切なトイレが使用できない衛生問題、そして環境破壊などたくさんの問題を抱えています。


ソアヴィナンジーナ市の中心部

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月曜日に開催される市場

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市場で売られる野菜や果物

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配属先と活動について

 私の隊員としての職種は「コミュニティ開発」です。コミュニティ開発の隊員は主に「地域住民が望む生活改善や収入向上、地域活性化への寄与」を目的としてさまざまな活動を行います。
 私はこのコミュニティ開発の隊員として、首都アンタナナリボ大学の分校にあたるソアヴィナンジーナ高等学院(同イタシ大学)に配属されています。


大学校舎

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風力とソーラーパネルでの発電

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 約1,800人の学生が在籍する大きな大学ですが、電気や水道といった公共インフラは整備されておらず、深刻な教員不足にも苦しむ厳しい環境の中で運営されています。
 私はこの大学で学生や大学周辺の農村住民を対象として、日本の行政施策を軸として進められた農村地域開発手法である「生活改善運動」の普及啓発を目的とした講義やワークショップを実施しています。


学校の教室内の様子

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大学前の食堂

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大学での活動について

 大学では、農業や環境、再生可能エネルギーなど複数の学部生を対象に生活改善に関する概論講義を行うとともに、「改良かまど」作りの実技実習も行っています。講義では、日本における生活改善運動の全体像を示すとともに生活の質を向上させるために必要となる考え方やさまざまな手法を教えています。

 特に私が講義の中で大切にしていることは、普段何気なく過ごしている生活の中に潜む「ムリ・ムラ・ムダ」などの課題についてあらためて考える機会を設け、小さなことからでも改善に取り組むきっかけを作ることです。

 例えば、休養を取らず働き続けてムリをすると病気になって医療費が必要となった、繁忙期と休閑期の仕事にムラがあるため収入が安定しないなど、当たり前だと思っている毎日の中で時間や労力、お金などについて「ムリ・ムラ・ムダ」があるかどうかなどを学生と一緒に考える時間を設けています。

 現在は、大学での講義と実習を終えた学生たちと一緒に農村を訪問し、農村住民を対象として生活改善運動の普及啓発と改良かまどの作り方の指導を行っています。
 マダガスカルの日常生活や地域コミュニティはたくさんの課題や問題を抱えていますが、行政や政府、支援国からの援助ばかりに頼るのではなく、まずは自分たちの力で改善できることを見つけ、行動することの大切さを伝えています。


農村でのフィールドワーク

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改良かまど作りの指導

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改良かまどについて

    マダガスカルはたくさんの動植物が生息する自然豊かな島国ですが、かねてより森林破壊が深刻な問題となっています。農地や牧草地への転用、建材(家具材)への利用、そして薪や炭といった燃料として利用することなどによる、無計画な森林伐採が原因とされており、森林消失の影響はCO2排出量の増加や島固有の生物多様性の喪失など多岐にわたり、土壌流出や土砂崩れなどの災害も発生しています。

     マダガスカルの一般的な家庭や食堂、商店、学校(私の大学も含む)などはガスを持っていないので、調理の際は燃料として薪や木炭を使わざるを得ない状況にあります。
     三つの石やレンガを三角形に並べ、その上に鍋を置くだけの「三つ石かまど」で炊事をするため燃料効率がとても悪く、大量の薪や炭を消費するとともに煙がたくさん出るので健康への悪影響も問題となっています。

    マダガスカルの人たちも、森林を破壊することが生態系を乱し、気候変動を引き起こす原因になることをわかっていても、毎日の食事を作るためには木を切らざるを得ない葛藤を抱えています。


薪や炭を大量に消費する「三つ石かまど」

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 そこで、私は活動を通じて「改良かまど」の使用を提案しています。日本にルーツがある改良かまどは、JICA海外協力隊によって1990年代から開発途上国で広く普及し、世界各地で効果を上げています。
 熱効率がよく、薪の使用量を約40%抑えることができるといわれています。家庭において簡単に作ることができ、材料も赤土や粘土、灰、藁(わら)、水とすべて身近な環境にあるものばかりで、新たな出費を伴う材料はひとつもありません。


燃料効率の良い「改良かまど」

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自分たちで作った「改良かまど」で炊飯

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 私はこの改良かまどを普及させることで、薪の使用料が減り、ひいてはマダガスカルの森林保全に繋がることを期待しています。また家庭内においても、薪や木炭の購入費用が抑えられるだけでなく、調理にかかる時間の短縮と煙の削減もできるので、女性の家事労働負担の軽減になると考えています。
 経済的にも、そして健康と環境にも優しいこの取組を今後も進めていきたいと思っています。


学生や村人たちと

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Profile

◆執筆者について
氏名:道官 丈晴
出身:三木町
隊次:2022年度1次隊(2022/4〜2024/3)
職種:コミュニティ開発



政策課 広報統計係
〒761-0692 香川県木田郡三木町大字氷上310番地
Tel:087-891-3302

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